山手線内回りがすっぽり入ってしまうほど広大な浜名湖は、太平洋と今切口でつながる南部と、山々に囲まれた北部で表情が異なり、古くから詩歌に詠まれてきた風光明媚な場所。520年ほど前の1498(明応7)年に起きた大地震や津波などによって陸地が決壊。遠州灘とつながり海水が流入したことで汽水湖となった浜名湖は、魚や貝、タコ、エビ、カニなど、800種類もの魚介類が住む豊かな湖へと生まれ変わりました。人々に恵みをもたらす浜名湖の周りには多くの人が暮らすようになり、さまざまな文化や産業が育まれていきました。

豊穣の湖で美食を堪能

100年以上の歴史がある「たきや漁」は、船に取り付けられた水中灯で湖底を照らし、集まってくる魚介類をモリで突いたり、網ですくったりして捕まえる浜名湖でしか見られない伝統漁法。とれたての魚介を使った料理は風味豊かで格別の味わい。また、うなぎやスッポンの養殖で知られる浜名湖ですが、古くから牡蠣(かき)やのりの養殖も盛ん。浜名湖内を南北に移動しながら1年半ほどかけてゆっくり育てられた牡蠣は、山から運ばれるミネラルや有機物を吸収し、身が大きく、濃厚な味わいが特徴。弁天島周辺でよく見かける、湖面から飛び出た枝が整然と並んだ下では、のりの養殖が行われています。200年以上の歴史がある浜名湖のりは、鮮やかな緑色と強い磯の香りを生かし、生のりや板のり、佃煮にしても美味。滋味あふれる浜名湖の恵みを五感で味わってください。

自然の営みがつくる特産品

浜名湖がある遠州地方は、1年を通してあたたかく、晴れの日が多い地域。太陽の光がたっぷりと降り注ぐ奥浜名湖の丘陵地帯は、全国有数のみかんの産地です。糖度と酸味のバランスがとれたみかんは贈答品としても人気。他にも、マスクメロンをはじめ、次郎柿、ピオーネといったさまざまなフルーツが栽培され、収穫体験もできます。少し足を伸ばすと、日照時間が長く温暖な三方原台地では、味わい深く香り豊かな浜松茶を、日照時間が短く寒暖の差がある山間部では、ほどよい渋みとうまみ、爽やかな香りが人気の天竜茶や春野茶を栽培。地形や気候を生かした特色あるお茶を飲み比べるのもおすすめです。また、浜名湖畔ではガーベラをはじめ、菊やフリージア、スイートピーなど、花の栽培が盛ん。特にガーベラは全国一の生産量を誇り、毎年100種類以上の新しい品種が開発されるそう。四季を通じて咲くさまざまな花が、訪れる人の目を楽しませてくれます。

浜名湖周辺には、景勝地としても知られる舘山寺温泉や弁天島、里山を体験できる農家民宿など、希望にあわせて滞在できる施設がずらり。地元グルメやジビエ料理、満天の星空、都会の喧噪から離れたのんびりとしたひと時が、旅の思い出をより素敵に彩ってくれるはずです。